2008年2月20日水曜日

「フィラデルフィア」を観る

午後のロードショーで「フィラデルフィア」を観る。


まぁ、いわずと知れた名作ですから、幾つか書き残しておきたいポイントを、という感じで。


まずは、オープニング。街の風景を延々と繋いでいくんですが、これが、主人公たちが一切映っていないのにも関わらず、キレイな導入になってる、というところですねぇ。
いわゆる、「あったかい気持ちにさせる」的な映像なんですよ。オープニングの一連のショットは。どれも。子供が手を振ってたり、挨拶してきたりして。
これから始まる“ヒューマンドラマ”に向かって、受け手の感情を上手に誘導していく、という。


ちなみに、舞台になるフィラデルフィアという都市は、あの「ロッキー」の舞台にもなっています。あの有名な、階段を駆け上がっていくシーンは、市の美術館なんですね。
興味がある方は、この作品とロッキーを見比べてみても面白いかも。
もう一つ、ウンチクとしては、このフィラデルフィアという都市は、かつてクェーカー教徒という人たちが興したんですね。“友愛”を掲げる、キリスト教の一派なんですが。
で、この“友愛”という言葉も、作品中に出てきます。知らないと素通りしちゃうアレですけどね。



さて。
主人公のトム・ハンクスも、彼の“恋人”役のアントニオ・バンデラスも、もちろんデンゼル・ワシントンも、とにかく若い!
で、主人公2人の、キャラクターの描き方は、まぁ、当たり前といっちゃそうなんですが、見事ですよね。
やり手の若いエリートのトム・ハンクスと、生命力に溢れた“町ベン”のデンゼル・ワシントン。

公開当時には、人種的なポジションの逆転がどうのとか言われてたような気もしますが、今観ると、それは、そんなに気になりませんねぇ。
それは、デンゼル・ワシントン自身が、ハリウッドの中でキャリアを切り拓いてきた成果であるとも言えるワケですが。
つまり、黒人の俳優が、白人のスターと肩を並べて登場し、出自に左右されないような役柄を堂々と演じるようになっている、と。
もちろんそれは、彼だけの功績ではなくって、例えばモーガン・フリーマンとかにも言えることですが。


作品に戻って、もう一つ。
この作品は法廷劇でもあるワケですが、そのシーンで、トム・ハンクスに「法律を愛している」みたいなことを語らせるんですね。「法律と一体化して正義を遂行出来るのは素晴らしいことだ」みたいなことを言うんですが、その時に、法廷にいる全ての“法律家”の表情を映すんです。
トム側の弁護士(デンゼル・ワシントン)と、相手方の弁護士たち、さらに、判事も。
皆、同じ表情で頷くんです。その辺から、公判の流れが変わるんですよ。そこが巧い。

ま、ジョナサン・デミ監督の名作に対して「巧い」とか、言ってる場合じゃないんですけどね。

そんな感じの名作でした。


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