2009年11月1日日曜日

「バンク・ジョブ」を観る

ロンドンが舞台の、実話を基にしたという「バンク・ジョブ」を観る。


う~ん。
面白かった。いい作品でした。


上手く言えないんだけど、こじんまりまとまった、というか、無理をしないでやれることをキッチリやる、という製作ポリシーを感じて、そこも好印象。

ストーリーは、政治的な思惑から、情報機関「MI-5」(ちなみに、ジェームス・ボンドが所属しているのはMI-6)がある銀行を襲撃する計画を立て、それに乗っかってしまった男たちが、色々ありながら最終的に…、というもの。

まず、銀行襲撃を決行するにいたる前段階の説明を、冒頭でかなりテンポ良く進めていって、そこがちょっと分かりにくいんだけど、まぁ、なんせ実話なんで、そこはしょうがないっスね。
もちろん、全部がちゃんと一つに収まるようになってるんで、全然いいんですけど。


面白いのが、“襲撃”を成功させた後に色々展開がある、という部分。
「やった! 逃げろ!」で終わるんじゃなくって、むしろその後の方が面白かったりして。
この部分の話の造りはなにげに面白い。


実行犯たち、MI-5、警察署の腐敗警官と彼らを買収して“子飼い”にしているポルノ王、という三つ巴の抗争が、と。
そこに、主人公の男の、生活感や、人生との格闘に敗れかけているという“動機”、美人な奥さんと“仕事”の話を持ってきた女との微妙な関係、とか、その辺の、ちゃんと丁寧に描かれた「人間ドラマ」が挿し込まれていく、ということで。

主人公の俳優さんが、またいいんだよねぇ。ジェイソン・ステイサム。
役の、奥さんや娘を思う“普通の人間”の哀愁と、襲撃を成功させるカリスマ性とか、意外に頭も切れたりするというキャラクターが、この俳優さんだとちゃんと成立してる、というか。
別に演技がどうこうってことじゃないんだよね。存在感がいい、という。
「スナッチ」での役よりも、もっと奥行きのあるキャラクター、という感じで、ちゃんとそれを演じきってます。


ディテールとしては、モダンな画がまず印象的。デジタル機材を使うとこういう画になるのかなぁ。
最近の、特にイギリス映画では、こういうシャープな画が多いので、もうこれが一般的ってことなんでしょうか。
まぁ、ひょっとしたら、イギリス特有の、光量自体が少ない土地柄というのも関係してるのかもしれませんが。


で、時代感を表現するため(設定は、70年代)の街路や建物やモブシーンは殆ど作らず、基本的にはセットの中でのカットで話を進めていく、と。
狭いアングルのショットを多用してるのもそうだし、とにかく余計なことはしない、ということですね。銀行襲撃の話なのに、あまり銀行らしいショットが出てこなかったりするワケです。襲撃のターゲットは地下の貸し金庫なんですが、要するに、必要なそこ貸し金庫しか撮らない、という。

アクションシーンも最低限に抑えているという印象。もちろんガンアクションもなし。


それでいて、ラストの駅のホームでのシーンなんかも緊迫感をしっかり出すことに成功してるし、巧いなぁ、と。(地下鉄のホームでのショットなんかも、凄い上手)
しかも、ゴチャゴチャするカットは、ホームから、駅の裏手という“安上がり”な場所にちゃんと移動して撮ってるんですね。
その辺も、巧いと思います。


なんか、ちゃんとカタルシスもあるしね。


うん。
いい作品でした。



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