TBSのダイヤモンドシアターで、アンソニー・ホプキンス主演の「アトランティスのこころ」を観る。
最初は知らなかったんですが、オープニング・クレジットに「原作 スティーヴン・キング」と出てまして。
で、見始めてすぐに、「なるほど」と。
中年にさしかかっている主人公の男が、友人の死の知らせを受け、自分の過去を振り返る、と。
まさに「スタンド・バイ・ミー」の世界なんですね。
焼き直しと言ったら言葉は悪いですが、しかし、「スタンド・バイ・ミー」で描かれている情景こそが、スティーブン・キングの「作家のテーマ」なワケで。
それを、手を変え品を変えて語っていくのだ、と。
ま、いい作品ですよ。
主演がアンソニー・ホプキンス、主人公の中年時代を演じるのがデヴィッド・モース、監督が「シャイン」のスコット・ヒックス、それで原作がスティーヴン・キングですからね。
そりゃ、いいに決まってます。
テーマはずばり、「“子供”を捨て、大人に変わっていく」という、ここが「スタンド・バイ・ミー」と一緒なトコですね。
いわゆる成長譚なんですが、その舞台が、日常風景の、ホンの少し外側にある、というのが、S・キングらしいんですけど。
しかも、季節は「夏」。ここがミソ。
ラストに、中年になった主人公が自分の故郷を訪れるんですが、この時の季節が冬で、ここは対比をちゃんとしよう、と。
廃墟になった家屋の絵面って、結構インパクトあるし。
「スタンド・バイ・ミー」では、若くして亡くなった兄との永遠に続く対比に苦悩する主人公が登場しますが、この作品でも、やたらグラマーで我儘で、息子には(愛情は注いでいるものの)薄情な母親、という存在が設定され、その母親に対して“自己主張”をぶつける、という、つまり反抗期にさしかかる瞬間、というのが描かれるワケですね。
毎日が楽しくて楽しくて、そんな日が永遠に続くと思ってて、周囲を疑うことも知らずにいた、ある年(主人公が11歳の年で、この年齢は作中では強調されて出てきます)の夏休み。
その夏の間に色々あって、そして町を出て行く、と。
そういう物語ですね。
ポイントは、やっぱりラスト。“ガールフレンド”の娘、というのが登場するんですが、彼女が、見るからにやさぐれてるワケです。そんな彼女に、かつて自分が飲み屋(兼、非合法ノミ屋)の女将にしてもらったように、親の若い頃の写真を差し出す、と。
このシーンは、ホントにグッと来る。
無関心そうに去って行きそうだった娘が、立ち止まって、写真を受け取ろうと手を差し出す、という。
この監督さんは、名作「シャイン」でも、父との葛藤を抱えた主人公を描いてますが、その辺りはこの作品とも共通項があるので、ひょっとしたら、それは監督自身のテーマでもあるのかもしれませんね。
子供から大人へ。
それは、何かを失うことなんだ、ということですね。キングに言わせると。
そして、人生は水が流れるように流れていってしまうものなんだ、と。「いつまでも子供のままで」なんて無理なことだし、抗うことは出来ないし、だからこそ、“追憶”は常に切ない感情とともにあるのだし、それは語る価値のあることなんだ、と。
そういうことっスかねぇ。
ちょっと感傷的すぎるかな…。
ただまぁ、自分も、生まれ育った“箱庭”のような環境から外へ出て行った人間なんで。
そういう年齢になってきてるっていうのもあるし。
どうしても、ね。感傷的にはなっちゃいますよ。どうしても。
えぇ。
そういうワケで、多分“超”がつく程の低予算作品だと思うんですけど、グッとくる良作だと思いました。
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