2008年11月5日水曜日

富野由悠季監督が吠える

「コンテンツ」を扱うイベントでの、富野さんの講演録がネットで紹介されてまして。
ミクシィやはてなでも取り上げられていたので、チェック済みの方もいると思いますが。
ここでも、抜き書きの形でご紹介。



 デジタルやインターネットが決定的に有利なのは、マンツーマンの作業が可能だけれど、そのスタッフが目の前にいる必要がないという部分
。それ以上の機能は基本的に認めたくないと思っているぐらいです。便利だから全部利用するのはいかがかと思うが。技術は全否定しているわけではないということも了解していただきたい。


 チームワークやスタジオワークは決定的に重要です
。こういう所に集まって仕事しようとしている人たちはほとんど我が強いんです。隣の人の言うことは絶対聞きたくないという人がほとんど。だからダメなんです。お前程度の技能や能力でメジャーになれると思うな、なんです。

 宮崎駿は1人だったらオスカーなんか絶対取れませんよ。個人的に知っているから言えるんですが。彼は鈴木敏夫と組んだからオスカーが取れた。組んだ瞬間僕は「絶対半年後に別れる。こんな違うのにうまくいくわけがない」と思いました。知ってる人はみんなそう思ったんです。

 それがこういう結果になったということは、あの2人が半分は自分を殺して半分は相手の話を聞いたんです。みなさん方も、お前ら1人ずつじゃろくなもの作れないんだから最低2人、できれば3人か4人。スタジオワークをやる気分になってごらん。そしたらあなたの能力は倍、3倍になるはずだから。オスカー取りに行けるよ、という見本をスタジオジブリがやってくれているんです。

 当事者はそういう言い方しないから脇で僕がこう言うしかない。宮崎さんが公衆の面前で「鈴木がいてくれて助かったんだよね」と本人は絶対言いません。どう考えてもあの人、1人では何もできなかったんです。「ルパン三世」レベルでおしまいだったかもしれない。本人に言ってもいいです、知り合いだから。

 そういう時期から知っているから、そこでの人の関係性も分かってますから。我の強い人間のタチの悪さも知っています。みなさんもそうですよ。隣の人に手を焼いているとか、「あいつがいなけりゃもっと自由にできる」と思ってる人はいっぱいいるだろうが、若気の至りでそう思ってるだけだから。

一番目指さなくちゃいけないのは、34~35までに、40になってもいいと思うけど、パートナーを見つけるべきだということです。もっと重要なのは、その人とキャッチボールができるフィールドを手に入れていくこと

 ビジネスを大きくしたいなら、そこで必要なのはチームワーク。悔しいけど相手の技量を認めるということです。僕は例えば安彦君の技量は全部認めます。あの人の人格は全部認めません。大河原さんの技量は認めません。大河原タッチは大嫌いです。でもそれは絵のタッチのこと、デザインはまた別です。「惚れたら全部正義」と思うのがいけない。何を取り入れて何を捨てるか、ということをしなくてはならないんです。

 僕の場合はサンライズという制作者集団があって、その上にフリーの人間が乗っかって1つの作品を作るという構造があったから良かったと思います。1人の人間の365日の生活費を保障するのはとても大変なことです。ですからそういう関係でない、スタジオワークを完成させていくということはとても大事なことです。



特に最後の部分がポイントですね。フリーの人間が、サンライズという組織の上に乗っかって作品を作ったから、良かった、という。
スタジオという技能集団がいて、富野由悠季という頭脳が、その技能集団を手足として使って、自分の頭の中にあるアイデアを具現化していく、と。
その時に、スタジオが求める「商業性」と、頭脳であるクリエイターの「作家性」を、同時に成立させる、という感じでしょうか。

映画でも、スタジオ・システムとか、プログラム・ピクチャーというのがあって、そういう環境から名作が生まれる時っていうのは、「頭脳」と「技能集団」が同じように機能してる時だと思うんですよね。

その、スタジオワークという意味で、チームワークが大事なのだ、と。
コミュニケーション能力が高くない人が多いですからね。とにかく。それは、世代的な特徴としてもそうなんだろうし、この分野にいる人の特徴ということでも、そうだし。


それから、富野さんのインターネット評も、面白い。「ツール」としてのみ、評価する、という。
うん。
究極的には、ウェブっていうのは、そういうものだからね。
だから、本質突いてますよ。富野さんは。


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