2008年12月21日日曜日

「ラスト・キャッスル」を観る

ミッドナイト・アートシアターで、ロバート・レッドフォードが主演の「ラスト・キャッスル」を観る。


なかなか面白い作品でした。
舞台は、軍の刑務所ということで、かなり大掛かりなセットの中で、延々と男ばっかりが出てきてワッショイワッショイやるんですが、しっかりとしたテーマもありつつ、ドラマもありつつ、カタルシスもありつつ、「明日に向かって撃て」的なオチもある、という。


レッドフォードは、命令を無視して独断作戦を決行して、それが失敗して部下を(8人)殺されてしまうという“過ち”を犯して、軍の刑務所に服役する、という役柄。彼は「歴戦の戦士」で、軍関係者にその名前が広く知れている、という。

この、設定の“案配”が、凄い良くって。
軍人だから、その階級というヒエラルキーがあるんだけど、それと同時に個人の人格が集める“尊敬”というのがあって。
それから、舞台が刑務所なので、看守側と受刑者たち(作中では「プリズナーズ」って言われてます)の関係があって。
この「関係性」が激突する、という。人間関係という「構造」が激突する、というか。

冒頭、所長の軍事コレクションみたいのがあって、それを、“受刑者”である主人公が、「戦場経験のない人間の好む趣味だ」みたいに言うんですね。
このセリフが、まぁ、セリフ自体の説得力もそうなんだけど、作品の中に観る側を一気に引き込む、かなりキラーなセリフ、というか。

また、このイントロダクションの作りが良くって、5分くらいで全部一気に説明しちゃうんですよ。舞台と、背景と、登場人物のだいたいのところを。
で、そこまでくると、だいたい何が起きるか、分かっちゃうんだけど、でも、全部説明しちゃう。
舞台も、最初から最後まで、ずっと刑務所の中だし。(しかも、独房とグラウンドと、所長室、あとは食堂ぐらいしかでてこない)


階級というか、それを示す、肩章か。
肩章に支えられたヒエラルキーと、個人に対する尊敬に裏づけされたヒエラルキーが激突する。

面白いのが、「敵役」の所長が、例えば私利私欲というか、裏で違法にカネを儲けてる、とか、そういう人物じゃない、という部分ですね。いわゆる、普通の悪人のようには描かれてない。
彼は彼なりに、実は正義を遂行している人物で。
ただ、作中では「バトル・フィールド」って言葉で言われてましたが、実戦の経験がない。例えば心理学とか、そういうのを学んでる、みたいな描写もあって。
そういう「指揮官」。


この「指揮官」というのが、作品のテーマなんですね。

カリスマの周りに、他の人たちはホントに自然に集まってきちゃうんだけど、しかし同時に、担がれたカリスマというのは、彼らの生命や人生をも背負ってしまう、と。
まぁ、リーダーとは、そういうモノなんですけど。

所長に対抗することになる主人公は、ガッツというか、精神力というか。懲罰に、衆人環視の中で、耐え切ってしまうことで、逆に尊敬を集める、とか。
それから、言葉。「黙ってついてこい」じゃなくって、周囲の“兵卒”たちの士気を高めてしまう言葉を持っている。
そういうのは、資質もそうんだけど、経験によって身につけたものでもあって。それは、戦場での、ということなんだけど。所長には決定的に欠けているのが、それで。

という描写がなされるワケですね。


彼に感化される、彼の戦友の息子、というクセ者が出てくるんですけど、彼のビルドゥングス・ロマンもなかなか良くって。



う~ん。
なんか、うまく説明出来ませんねぇ。



ちょっと切り口を変えると、ワリとリベラルなスタンスを持っているレッドフォードが、こういう軍人(しかも、歴戦の勇士)役を演じるっていうのは、ちょっと意外な気もするんですけどね。

でもまぁ、彼は彼なりの愛国心というのがあって、それの発露ってことなのかもしれませんね。

でも、「実戦経験がない司令官」というのは、今となっては、ブッシュの暗喩だったりして、面白い。



あ、あと、所長の鼻息がずっとシューシュー聞こえる、という演出は良かったです。ボンクラっぽくって。話しかけても1回必ずシカトするところ、とかも。


あとはなんだろうなぁ。
カメラワークも、上手。これはホントに、デカいセットの中で撮影する、ということが巧く働いている、ということなんでしょう。きっと。(この間の“トークショー”で、その辺を勉強してきたばかりでした)
グラウンドと、そこを見下ろす所長室や監視塔の、上下の位置関係みたいのを利用したショットは、とても上手でした。いっつも、チラチラそっちの方を見上げてる、とかね。


でもホントに、これはシナリオの、というか、企画の勝利なんでしょうね。刑務所のセットの中で丸まる撮る、という。
しかも、ただの刑務所じゃなくって、軍の刑務所だ、というところが。

普通に描こうとしても、こういう複雑な関係というのは、なかなか難しいですよね。説明だけで半分ぐらい終わっちゃいそうだし。
それを「軍の刑務所」というだけで、オッケーになっちゃうワケですから。



うん。
脱獄モノもいいですけど、こういう刑務所モノも、いいですな。


という感じで。

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