2008年1月16日水曜日

「ミリオン・ダラー・ベイビー」を観る

「海を飛ぶ夢」から“尊厳死”繋がりで、というワケではありませんが(ちょっと、あります)、クリント翁の「ミリオン・ダラー・ベイビー」を、一日延滞して、DVDで観ました。


まぁ、屈指の名作ですよね。

この、シャープな質感と、明暗のコントラストを強くして“黒”を思いっきり強調させる、という画の作り方の、ある意味で究極な感じなのが、まずはこの作品の特徴ですよね。
個人的には、ワリとこういう画が、最近のハリウッドの“流行”なのかなぁ、なんて思ってるんですが、ま、好きなんですよ。この手の色合いの画が。

俺の理解している範囲では、光量を多くして、レンズの絞りをきつくして、という技法なんでしょうけど、まぁ、恐らく、他にも色々な技術があるんでしょう。“銀残し”とか、ね。一応、名前は知ってるんですが。
「ミスティック・リバー」では、ここまでコントラストが強い感じではなかったので、演出上の要請でこうなった、と。
まぁ、大半が室内(ジム、試合会場、部屋の中)でのストーリーなので、作りやすい、ということもあるんでしょうけど。

しかし、恐らくそんなに予算も使ってないであろう、その範囲内でキチンと物語を語れるようになっている、シナリオが素晴らしいですよね。
実は、“使い古し”のトピックでもあるんですよね。まずは、ボクサーの成功物語、というのがそうだし、白人のボスに黒人のパートナー(ジムの用具係?)というのも、実はそう。田舎から出てきた、ダイナーのウェイトレス。アメリカのある種の恥部であるホワイトトラッシュ。トレーラーハウスに暮らす彼女の怠慢な家族。不器用な老いた男。その男と若い(一応、ね)女性との擬似的な父娘関係、イコール、不器用な恋愛の物語。対戦相手の、“悪役”としての黒人選手。狡猾なメキシコ人、・・・。

ただ、そんな“使い古し”の物語を、3人の抜群の存在感と、シャープでエッジの効いた画面も含めたクリント翁の演出が、まったく古くささや既視感を感じさせない、という。

カメラワークとかカット割りなんていうのも、ホントにオードドックス。というより、シンプル。
試合の場面では、必ず、まずは斜め45度から70度くらいからの俯瞰から始まり、リング上の彼女、リングサイド、観客の表情を、順番に追っていくだけ、という。
だけど、まぁ、いいんですよ、これが。そこから生まれる説得力。素晴らしい。


彼女の、手ごたえを実感した時の素朴な笑顔とか、勝利の時の歓喜の表情とか、最高ですよね。
クリント翁の、リングサイドで右往左往しながら試合を見る仕草とか。


まぁ、でも、俺としては、時には画面を覆うぐらいの、“真っ黒な暗闇”の使い方ですよねぇ。

あと、勉強になるよなぁ、と、つくづく思ったのは、やっぱり、“実は低予算”であるところですかねぇ。

まぁ、しかし、いい作品でした。



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