2008年1月14日月曜日

「ボビー」を観る

傑作との誉れ高い、「ボビー」をDVDで観る。

“ボビー”というのは、ロバート・F・ケネディのことで、兄がJFK、つまりケネディ大統領ですね。ボビーもRFKなんて言ったりしますけどね。

で、この“ボビーの暗殺”がストーリーの軸になるワケですが、O・ストーンの「JFK」とは違って、犯人側の描写は一切ありません。同時に、ボビー本人の描写も、ほとんどありません。
まず、この構成がすばらしいですよね。
グランドホテル・スタイル、というか。
ちなみに、それを意識して「グランドホテル」というセリフが出てきます。

個人的に、こういうスタイルの群像劇というのは、ホントに大好きなんで、そういう意味では、採点はやや甘めですが、恐らく、それを抜きにしても傑作でしょう。


登場人物にとっては、“RFK”とは、つまり“希望”なワケですが、その、“希望”を中心に円を描きながら、最後に“悲劇”に向かって収束していく、という物語。

たとえば、これも名作ですが、「クラッシュ」だと、逆で、差別であったりとか不信感であったりとか、そういうネガティヴな要素が物語をドライヴさせる推進力になって、最後に、小さいんだけど、希望というか、ポジティヴな所に着地する、みたいなアレで。

どちらも、“暴力”と、その暴力が“破壊する(した)モノ”を描いている、という共通点も見出せますが。
あ、あと、どちらも傑作ですね。


特に政治的なメッセージを具体的に言ったりはしてないように見えますが、はっきりと、何度も、ベトナム戦争云々という言葉が出てきますね。RFK(本人のニュースフィルムを使ってます)も言うし、登場人物も言いますし。
これはずばり、現在のイラク戦争のメタファーですよね。

この作品の豪華キャストも、恐らく、ハリウッドの“民主党サイド”というか、“リベラル人脈”の中で繋がっている人たちなのでしょう。
チャールトン・へストンなんか絶対出てきませんよ、という。

あ、それから、“FBI”というセリフもちょっと出ますね。
これは、この時代、例えばキング牧師の暗殺にはFBIやCIAなんかが絡んでたワケで、これを連想させる為ですよね。
そういう意味では、極めて政治的な意図を持って作られ、なおかつ、それゆえに作品自体の評価もさらに高くなっている、という作品と言えますな。


個人的には、ローレンス・フィッシュバーンが最高にハマッてるシェフのエピソードが最高でした。
黒人とラティーノとの、賄いを食べながらの会話。
その、彼らに対する“差別”を理由にクビにされるクリスチャン・スレイター。その、上司の支配人は、「ファーゴ」の“ダメ顔”。
支配人は“リベラル”な感じで、差別には怒るが不倫もしちゃう、という。しかも女房はシャロン・ストーン。



恐らく監督は、大衆と、もしくは、その大衆の夢や希望と直結していた政治家、という、政治家としてはRFKが最後だったのであろう、ある種の“残像”を描きたかったのだと思います。
その“大衆”の方を描いているワケですね。この作品は。
その目線のポジションも、個人的には好感が持てるところでしたね。


底辺と頂点が“希望”をキーに直結していた民主主義。そして、まさにその民主主義の手続きである、選挙の真っ最中に、兄と同じように暗殺されてしまったRFK。
それ以降、アメリカのリベラリズムは沈没していくワケで、そこへの郷愁と、現在への批判こそが、この作品のテーマであり、同時に、スターを集めた引力、というか、作品の製作自体のエネルギーにもなったのではないのでしょうか。

というワケで、オバマ候補が「ケネディの再来」なんて言われている2008年の現在にこそ相応しい作品でっす。




DMMでレンタルも出来ます。
>>>ボビー
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