ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の「地下水道」を、京都みなみ会館で観た。
いやぁ、凄いものを観てしまった…。
京都には、小さいけどかなりディープなミニシアター文化が(どうやら)あって、そのミニシアターの一つ、京都みなみ会館という映画館でやってる、特集上映「ポーランド映画祭2014」の上映作品のひとつ、ワイダ監督の「地下水道」を。
ポーランド派。
恥ずかしながら、初めてでした。
舞台は、ドイツ占領下のワルシャワ。大戦末期、いよいよドイツの敗戦が予見されるようになったことから、ポーランド国内のレジスタンスが蜂起して、という。
まず、冒頭の長回しがハンパないです。
爆撃と砲撃で廃墟と化した都市の、街路を、レジスタンスたちが縦隊で歩いていくんですけど、もう延々歩いていく。走ったり、物陰に隠れたりしながら。
それを、ナレーション入りで、延々と撮る。
単純に、「セットどうなってんだ?」って感じなんですけど、要するに、作品全編でそういうことになってて、もうそんなこと言ってられなくなる、という、とんでもないことになってるんですけど。
で、それはともかく、戦うレジスタンスたち。
なにげに、部隊に愛人を同伴してたり、ちょっとアマチュアな感じの中隊が戦うんですが、彼らが、重装備のドイツ軍に圧倒されて、退却することになり、市内に張り巡らされた“地下水道”に潜る、ということに。
この、煉瓦作りの下水道の中を、中隊の生き残り(レジスタンスの女性が2人含まれている)たちが、進んでいくワケですけど、ここから、雰囲気が一気に変わるんですね。
ドイツ軍との戦いが、なんか、自分たちとの闘いに変化・転化する。
この、サスペンス感。
凄いですよ。ホントに。
下水の泥の感じとか、なんか湯気を上げてたり、「ドイツ軍に毒ガスを浴びせられた」と叫んで狂気に陥っていくレジスタンスたち、とか。
下士官みたいなヤツが、部下を気遣う隊長にウソの報告をしながら、とか…。
暗闇、泥水、汚泥、閉塞感、圧迫感、酸欠、疲労、苛立ち、ルートを見失った焦り、絶望感、などなど…。
そして、地上へ出るための、何通りかの出口(マンホール)。
これが強烈。
河へ出る排水溝には、なんと鉄柵。そこで息絶える恋人。
希望と共に這い上がったところにいる、ドイツ兵と、銃殺を待つ同胞たち。
そして、手榴弾のトラップ。
どれもエグい。
このサスペンス感は、物凄いと思います。
特にですねぇ。。。
ドイツ兵たちが待ち伏せしている、なんかの施設の中庭みたいな場所のショット。
ここも長回しで、中庭をパンしていくんですけど、ドイツ兵が背後に立ってて、その先に、虜囚となった同胞のレジスタンスたちがいて(その、絶望し切った表情!)、その先には、銃刑場代わりになっている壁があるんです。
血の痕があって。
いやぁ、痺れた。
そして、ラストシーン。
部下を探しに、地下に戻るか、否か。
隊長が、逡巡するんです。
あんなカット、観たことないです。マジで。
う~ん。
だから、戦争云々やレジスタンス、ドイツ軍による占領、というトピックを題材として取り上げながら、ちょっと別の部分、サスペンスのストーリーテリングという、ある意味では映画としての根幹の部分に、物凄い力強さがあって、むしろにそこに強く惹かれる、という。
もちろん、これは、今の時代に今の自分が観たら、という前提でのアレであって、だからこそ今も色褪せない(観るべき)価値があるんだ、ということが言いたいワケですけど、それが、実際の作り手の側の意図と合致しているかは、また別の話ではありますけど。
いやぁ、貴重な体験をしてしまったなぁ、と。
傑作です。
別に改めて言うことでもないんですけどね…。
0 件のコメント:
コメントを投稿