2012年4月27日金曜日

「ドライブ」を観た

新宿バルト9にて、「ドライブ」を観た。



いやぁ、素晴らしかったですねぇ。

良かった!



予告編で「ダークナイト」の続編の予告が出て、それでテンションが一気に上がってしまったんですが、それとはまったく関係なく、素晴らしい作品でした。


うん。


いろいろあり過ぎて、どこから書けばいいのか分かんなくなってるんですが、とにかくとりあえず、順番に。


まず!

冒頭の、つまり導入の部分が良い!
今からどんな物語が(作品として)語られるのか、どういう語り口で語られるのか、そして、その物語の主役である主人公が、どういう人間で、何をしていて、作品の中で何をしようとしていくのか、そして主人公が作品の中でどう扱われていて、それを受け手がどう受容すれば良いのか、という諸々を、かなりズバッと、つまり鮮やかに見せている(魅せている)、という。

いや、ホントに。

主人公の“クライアント”である2人組の強盗を「待っている」だけのシチュエーションで、これだけの緊張感をチャージできるなんて、ちょっと驚きです。ホントに。
だって、主人公は全然動いてないんですからねぇ。
それが、2人組の片方が「戻ってこない」、という、ただそれだけなのに、という、ね。


それから、これは主人公の造形がそうなんですが、それだけじゃなくって、作品全体の演出意図としてあるんでしょうけど、なんかダサい!

主人公なんて、サソリの刺繍が入ったスカジャン(みたいなスタジャン)着てんですよ!
ダサい!
(実際は、革製の、ライダースジャケットだと思うんですけど、いや、スカジャンに見えるんですよ・・・。)

蠍って!
しかも、白!


口に爪楊枝くわえて、手には革製のグローブ!
(いや、グローブは、ドライバーっていう職業柄のアレなんで、しょうがないっちゃしょうがないんですけど)
腕に付けてるのはアナログ式の時計だし、しかも、すげーダサい。

それから、BGM(サントラ)が、なんかホントに80年代みたいなヘンなサウンドで・・・。
あと、スタッフロールなんかのスーパーのフォントも古臭いし、よりによって色が、ピンクみたいな紫色で・・・。

ヒロインとのデートなんて、小川ですよ。
小川。小さな川。
なんか、運転しながらキラキラしちゃってるし。


いや、そういうのが、ここまで振り切っちゃえば逆にカッコいい、という、そういう塩梅になってるワケなんですよ。
なんかダサくて痺れさせる、みたいな。


もちろん、それは、単に俺が「ダサい」って言ってるだけで、完全に演出意図があってのことなワケで、まぁ、哀愁感を出す、というか、時代に取り残されてる(古臭い感覚で生きざるを得ない)男たちの姿を、とか、そういうことなワケですけどね。

「ダサい」って言ったらそうなんですけど、でも、作り手としては、それでいいワケです。
わざとそうやってるワケですから。

それは、作品自体が、ストーリーとかキャラクターたちの描写とは全然関係ないところで(まぁ、関係なくはないんですけど)、なんていうか、「映画への愛情」あるいは「ある時代の映画へのノスタルジー」の表明になっているからだと思うんですね。
ひょっとしたら、これは、俺が勝手にそう受け取っているだけかもしれないんですけど。

もうちょっと正確に言おうとすれば、映画への夢、というか、“かつての”映画が見せてくれた夢、というモノに対するノスタルジー、というか。

それは、単に“時代が”ということでなく、子供の頃、青年の頃、つまりまだ若かった頃には「夢を見ていた」けど、今は、その夢とではなく、現実と格闘していて、しかし、「夢を見ていた頃」に対するノスタルジーはあって、みたいな。

なんか割と、そういう重層的なメッセージと演出意図が込められているんじゃないかなぁ、なんて。

作品全体に散りばめられている「古臭さ」≒「意図されたダサさ」と、主人公たちの心象風景、というのは、そういう具合にリンクしてるんじゃないのかなぁ、というか。


違うかな。。。?



ただ、とにかく言えるのは、登場するキャラクターたちは皆、社会の底辺を這いつくばって生きている、ということですね。
それは間違いないワケですけど、つまり彼らは、とにかく現実の生活に苦しんでいる。
辟易してるし、倦んでるし、疲れてる。
現実の生活に。
現実との格闘に。

その現実から抜け出そうというアクションも描写されるワケです。
レーシングの世界に打って出よう、というシークエンスですけど。

登場人物の一人は、「昔は映画を作ってたんだよ」という科白を吐きます。「アクションとか、ポルノとか」みたいなことを言うんですが、つまり、今はやってない、と。
今は、ヤクザ稼業とカタギの稼業の、半々みたいなトコにいて。


だけどなんか、まるで足を引っ張って引き摺り下ろそうとするみたいに、誰かに足を引っ張られて、必死でもがかないと、その場所にもいられなくなってしまう、という、そういうシチュエーションがお互いに起こる、という。


そこはホントに、脚本の勝利なワケですけどねぇ。

それぞれのキャラクターのシークエンスを、最小の言葉(時間)で、的確に語っていく、ということなワケで。



いや、ちょっと話が(結論の方に)飛んじゃってますね。。。



演出の部分でも、大きなポイントがひとつあって、それは、ミニマリズム。
とにかく削ぎ落とす。

それは、多分に予算の制約みたいなのも関係してると思うんだけど、逆に、しつこく(敢えて徹底的に)描写してる部分もあることから考えると、やっぱりかなり意図的にやってるんだな、というトコなんですけど。

例えば、強盗犯たちの、踏み込んだ中の様子を描かない、という。
これはですねぇ。

かなり痺れますよ。

「こんなんアリか?」ぐらい、一切描かない。

これが、ここで最初に書いた、緊張感をチャージする術の1つでもあるワケですけど、逆に言うと、実は「これこそ映画だ!」みたいなトコでもあって。

その直後、カーチェイスはしつこく描写するんだけど、その相手は誰だか分からない。
だいたい、そのカーチェイスに突入する寸前の編集の間なんて、ホントに「え?」っていうぐらい刻んじゃってて、まぁ、それも含めてのスリリング感なワケですけどね。
(このシークエンスは前後も含めて、アクション映画としてのこの作品のクライマックスの1つで、銃声の“間”とか、ホントに完璧だと思います。俺なんか、見ててホントに飛び上がっちゃっいましたからね・・・。)

この、編集の巧さも含めたミニマリズムは、ホントに素晴らしい。

この監督は“分かってる”人ですよ。
分かってます。

観る側のこちらとしては、いち いちその“意図”にハメられちゃってしまったワケです。
えぇ。


逆に、例えば“着弾”のショットなんかは、いちいち見せるワケですね。ストリッパーが出てくるシーンでは、いちいち彼女たちの“お胸”を表情とセットで見せる。
その「いちいち」がねぇ。

いいですよ。

見てて、惹きこまれる。




もう1つ、ストーリー上の、脚本の上でのポイントがあって、それは、描かれている世界の大きさ。
小さいワケです。

登場人物なんか、凄い少ない。
だけど、その中に、ヒロイン(と、その息子)も居れば、主人公の“庇護者”もいれば、黒幕もいる。
凄く小さな範囲で物語が完結している。

それは、彼ら(登場人物たち)の生きている世界の小ささを表しているワケだし、彼らの人間自体の小さなも現しているワケで。(もちろん、予算の関係上もあるハズだけど)

つまり、だけど同時に、彼らは「もっと大きい何か」に押し潰されているワケです。
そういう日常を生きている。
押し潰そうとする力に抗うように、犯罪を犯すワケです。

しかも、今の生活から逃れようとするために犯罪を犯す、ということですらない。登場人物の一人は、「今の生活」すら、犯罪を犯さないと維持できない、ぐらい追い込まれている。

1人、黒幕であるキャラクターは、一見「押し潰す側」に居るように見えるんだけど、実は彼も、「東海岸のマフィア」という、「自分を押し潰そうする力」に(文字通り、必死に)抗っている。

で、常にその、「彼らが住む小さな世界」の外側(あるいは、頭上)を覆っている「押し潰そうとしている何か」は、殆ど一切表現されないワケですね。

ミニマリズムというのは、ここでも作用している、という。



そういうトコがねぇ。
ホントに、痺れさせてくれるって感じで。



それと、最後に、これは蛇足かもしれないんだけど、1つだけ。



実は、これも“ノスタルジー”とちょっと関係あるかもしれないんですけど、主人公たちというのは、すべて白人なんですね。
金髪碧眼。

ちょっと部分的な結論だけ言ってしまうと、そういう意味では若干ポリティカルな作品でもある、というか。

ま、ホワイトトラッシュを描く、ということに過ぎないかもしれないんですけどね。


黒幕のユダヤ系、主人公とヒロインに“災厄”を運んでくる、ヒロインの夫は、スパニッシュ系。

彼らに、主人公とヒロインは、巻き込まれるようにダウンスパイラルにハマっていく、というのが、物語の大きな構造になっているワケで。

ま、このポイントは、そういう「読み方」もある、ということで。





あ、あと、最後に流れる曲。

なんか、ワケ分かんない人間賛歌な内容の曲で、そこの「微妙に謎」な感じもねぇ。

良かったです。
ホントに。




長くなっちゃったから、この辺で終わった方がいいですかねぇ。




他にも、「追われる側」だった主人公が「追う側」になった時の視点の転換、とか、もうちょっとあるんですけど、割愛、ということで。



とにかく、いい作品でした。


何度も観たいな。。。
うん。






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