2010年1月11日月曜日

「アンダーカバー」を観る

こちらも「去年観たかったんだけどグズグズしてたら見逃した」一本、ホアキン・フェニックス主演の「アンダーカバー」を観る。 “去年”というより、おととしですかねぇ。去年のお正月の前の年末にやってた作品ですから。 原題は「We own the night」。意味は、ざっくり意訳しちゃうと「俺たちの夜」とか、そんな意味でしょうかね。「私たちは夜を手にした」って意味ですけど。 「アンダーカバー」という邦題はダメです。作品のテーマは“We”という単語に含まれているので、そこを外しちゃったらアウト。 ま、それはさておき。 いい作品でした。 いきなり気になったのが、音楽の使い方。舞台が80年代のニューヨーク(ブルックリン)ということで、80sバリバリのディスコサウンド満載。 まず、主人公がクラブの支配人なので、雰囲気にもマッチしてて、良かったです。こういう使い方もあるんだなぁ、と。 「アメリカンギャングスター」は、この作品よりもちょうどひと世代前という感じで、ソウル/ファンクで推す、というのがばっちりだったんですが、時代に合わせて曲だって変わる、と。 いい雰囲気を作ってます。時代感を、ね。 で。 作品は、警官一家に生まれた次男坊が、という設定。 親父や“良い子”だった兄とは対照的に、バーテンからクラブの支配人、という、“夜の商売”コースを歩んで、プエルトリコ系の激マブの彼女と付き合って、という役を、ホアキン・フェニックス。 いや、このキャスティングがヤバいです。 ホアキンは、クレジットによるとプロデューサーも兼任してるってことになってて、まぁ、これは受け手の勝手な憶測ですが、「ホアキンの兄」と言えば、なんつってもリバー・フェニックスでしょ、と。 兄と弟の物語、ですから。 作中でも、兄と同じ道を歩むようになる、という姿が描かれるんで。 やっぱねー。 いろいろ想像はしちゃいますよねー。思い入れがあるんだろうなぁ、とか。 まぁ、そういうことを抜きにしても、素晴らしい作品です。 ストーリーに戻ると、兄と弟と、父親。 父親のロバート・デュバルがかなりの存在感で、基本的にはこの3人の物語、ということですね。 親父は、兄も所属する署の署長という、かなり偉い役職にある人で、この親父が、職務と父親としての立場で悩むシークエンスは、かなり良いです。 警官の兄と、そうじゃない弟に対して、ちょっと接し方が違ったりして。 この、かなりセンシティヴなシークエンスを盛り込めるかどうか、書けるかどうか、撮れるかどうか、というのが、この手のジャンルの作品が“薄っぺら”になるかどうかの境目だと思うし、まぁ、この作品にはそういう“奥行き”がある、というか。 あと、エバ・メンデス(超美人! 大好きです)演じる、ホアキンの恋人が、彼らの家族の間の絆からちょっと弾き出される、みたいになるんですね。 そこら辺の描写も良い。 彼女からみたら「遠くへ行ってしまう」という、そういう感覚。「殺されちゃうじゃない」とか「ママに会いたい」とか、そういうことをセリフとして言い続けるワケですが、心理としては「私の彼が遠くへ行ってしまう」と。 ちゃんと、そういう感情を抱えているのだ、という解釈が出来るようなカットが挟み込まれていて、彼女の哀しそうな表情も含めて、印象的でした。 「あなたの家族に嫌われても平気よ」という、結構素敵なセリフが最初の方にあるんですけど、この“家族”こそが、そもそも作品のテーマなので。 あとは、なんといってもカーチェイスのシーン。 高架下の道路、という、「フレンチコネクション」への挑戦状でもある、恐らくかなり意欲的なシーンだと思うんですが、これは相当いいです。 映画史におけるカーチェイスの名場面、というのを、更新したんじゃないか、と。 雨の日。 主人公の主観。 敵がはっきり認識されない。 静寂。 などなど。 このカーチェイスシーンを観るためだけにお金を払っても良いです。 時間的にはホントに短い時間なんですが、インパクトは大きい。 あ。 あと、これは作品全般に言えることなんですが、編集の“間”が巧いと思いました。 ややクラシカルなタイミング、という言い方が出来ると思うんですが、独特の繋ぎ方というか、フェイドアウトの間も独特で、面白かった。 これは、意図的なものなのか、あるいは逆に、「編集してみたらなんだかスムーズに繋げられなくって、しょうがないからぎこちなさを逆手にとった」ということもあり得ると思うんですけど。 結果的には、まぁ、好き嫌いはあるとは思いますが、個人的には良いな、と。 ちなみに、地理的なアレと、ロシア系のコミュニティを舞台にしている、ということで、「リトル・オデッサ」と似てるなぁ、と思ってたら、同じ監督さんでした。ジェイムズ・グレイ。 この「リトル・オデッサ」も、兄と弟の物語。 というワケで、「アンダーカバー」は、ディテールも含めて、何度でも観たい作品でした。 お薦め! 

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