2009年1月21日水曜日

「断線」を観る

真っ昼間のテレビ朝日の2時間ドラマの再放送で、原作:松本清張、監督:崔洋一、主演:松田優作(!)、そして共演が風吹ジュンという、豪華すぎて逆に引くぐらいな感じのドラマをやってたので、思わず観ちゃいました。


いやぁ。
トンでもなかったです。
これをテレビでやるかね、と。


虚無感ブリブリな、“裏”優作、という感じのアレが全開の、素晴らしい作品でした。
それから、この頃の風吹ジュンって、激マブだな、とか。


虚無感を抱えて、浮き草のように漂い続ける主人公と、その前に次々と現れては、「私に根を」張るように求める女性たち。
いや、よく出来たシナリオです。ホントに。見事に話をドライブしていく腕は、凄いなぁ、と。

ラスト、結局奥さんの元に戻ってくる、と。
そこで、もの凄い妖艶に変わるワケです。“お嬢さま”だった若奥さまが。
それって、結構凄い“運び”だな、と。


主人公は、若奥さまから、水商売の風吹ジュン、(ホントは二号さんなんだけど)資産家の有閑夫人の辺見マリ、という順に渡り歩いていくんだけど、この、3人の女性の配置の仕方が凄いですよね。

もちろん、それは原作の力でもあるんだけど。
ちゃんと2時間のドラマというフォーマットの中にそれをハメ込んでいる脚本の腕力は、結構凄い。
ちなみに、シナリオは橋本綾さんという方です。


とにかく、奥さんの元に帰ってくる、と。構造的には、そこに収斂されていくワケです。他の2人の女性とのドラマも。
ただただ「逃げたい」主人公を、それぞれは勝手に動いてるんだけど、結果的にどんどん(精神的に)追い込んでいく2人の女性。
その2人の女性の“欲望”に、弾き出されるようにして、奥さんの元に帰って来て、今度はその奥さんの“業”を解き放ってしまう、という。


ラストで、主人公の虚無感の理由が明かされるんだけど、それは、自分を捨てて入水自殺してしまった母親と、母親に抱かれて一緒に死んでいった妹だった、と。
これも凄い。息子だけ置いていく母親。自分だけ置き去りにされてしまう息子。

全部“女”ってトコも、ポイントですね。
この辺は、さすが“大巨人”松本清張って感じでしょうか。
怖ろしいっス。




演出面では、風吹ジュンが主人公にカラむ階段のカットが凄かった。
この辺はずっと長回しが採用されてるんですけど。
その、階段の、踊り場がなんか光ってる感じとか。


あとは、風吹ジュンが、自分のアパートに酔っ払って帰って来て、椅子の上に正座して座る姿、とか。
酔っ払ってるから、ということで、なんかクネクネしてるんですけど、あの演技は凄いっス。
アレはなかなか出来ませんよ。


それから、松田優作と辺見マリが、抱き合いながら2人して睡眠薬を飲む、という凄まじいショットも。
このショットの衝撃度は、メガトン級です。
しかも、そこが季節外れの海の家だった、というのが、後から分かる、という。

その、演出のスピード感も、結構注目かも。
長回しが多いのもあって、ゆったりなテンポに感じるんだけど、結構省略というか、バサッと省いてるトコもたくさんあって。それでテンポを出してるのかもな。
冒頭も、出会った2人が、何の説明もなく、新婚生活を送ってたりするからね。
それは、演出サイドの腕でしょう。恐らく。

奥さんが、主人公に呼び出されて、お寺の境内みたいなところを走っていくのも(上から鳥瞰の引きの画で撮ってる)、同じ画の中で立ち止まらせて、それだけで心情を表現したりして。



いやいやいや。
昼間っから凄いモンを観てしまいました、と。
マジ、ハンパないっス。


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