2008年10月20日月曜日

嗚呼、此処ニハ浪漫ガ或ル

新聞に載ってた、「男はつらいよ」の特集記事が面白かったので、ご紹介。
最後の(そして、恐らくは最愛の)マドンナ、リリーを演じた浅丘ルリ子さんのご登場。

浅丘が「寅次郎忘れな草」でさすらいの歌手リリーを初めて演じたのは73年、33歳のときだ。それまでマドンナといえば良家のお嬢さんだったり、貞淑な婦人だったり。
監督の山田洋次から最初に示されたのも、北海道の牧場で働く女性という役だった。浅丘は自分の細い手を見せる。「わたし、こんな手をしているんですよ」
宝石の似合うその手を山田はじっと見た。しばらくして浅丘に台本が届く。「場末のキャバレーを渡り歩く歌手」に変わっていた。
(リリーのセリフ)「ね、私たちみたいな生活ってさ、普通の人とは違うのよね。あってもなくてもどうでもいいみたいな、つまりさ・・・あぶくみたいなもんだね」

浅丘の胸のなかで、渥美は寅さんと分かちがたく生きている。いまも渥美を語るとき、つい「寅さん」といってしまう。
男くさくて粋で不良っぽくて、照れ屋で優しくて可愛くて、そしていつも笑わせてくれた。「私は愛していました。ほかのどのマドンナよりも、愛していました」
リリーがいた(奄美の)青い屋根の民家を、南の島の人々は「リリーの家」と呼ぶ。いま住む人はないが、近所の人が雑草をむしり、掃除する。いつしか、こんな伝説も生まれた。
――テキヤ稼業を引退した寅さんは、この島でいまもリリーと暮らしている。海辺で釣りをする島の子たちに旅の昔話を聞かせている、と。


いい話ですなぁ。



なんつーか、「アリとキリギリス」の話じゃないけど、寅さんはキリギリスなんだよね。
で、歴代のマドンナはみな、アリだったんですよ。キリギリスとアリの恋物語。

そして、葛飾柴又の団子屋さんたちもみんな、アリで。
満男は多分、キリギリスだけど。

寅さんっていうのは、アリに憧れ続けて、アリに恋し続けたキリギリスだったのだ、と。
フラれ続けちゃったワケだけどね。


でも、リリーもキリギリスだったんだよねぇ。


リリーもやっぱり、多分、ずっと、アリに憧れてて、だから寅さんとも何回もすれ違いになっちゃってて。


まぁ、最後に、リリーとの物語で終わって、良かったよね。
今はリリーと暮らしてるんだ、という「物語」を、今も紡ぐことが出来るワケだから。

それは、とても幸福な終わり方なワケで。


「男はつらいよ」、好きですか?
俺は好きっス。




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