2014年7月28日月曜日

「容疑者」を観た

BS日テレでやってた、ロバート・デニーロ主演の「容疑者」を観た。

原題は「City by the sea」ということで、「海沿いの街」ってことですね。
NY近郊の、ロングアイランドの南岸のビーチが、そこです。

最初はコニーアイランドかと思ったんですが、もっと寂れた、つまりもっと“郊外”の場所でした。

ただ、実は、あんまり「海沿いの街」ってとこに意味はなくて、ただ主人公がそこで育った、というだけのことなんですけど、まぁ、製作者サイドには、思い入れのある場所なのでしょう。
印象的なショットが幾つかあって、その辺には“思い入れ”を感じました。



ストーリーラインは、ちょっと凝ってて、主人公は(もちろん)ロバート・デニーロ。
NY市警の刑事で、生まれ育った街(ロングアイランド)からは離れて、市内の署で勤務してて、家族はなくて、独り暮らし。
同じアパートの下の階に暮らす女性と、恋愛中。

で、かつては家庭を持っていたことがあって、元妻と一人息子とは、もう何年も没交渉のまま。
元妻と一人息子は、“地元”の、ロングアイランドに暮らしている、と。

その、息子というのが、もうホントにダメ人間で、無職のヤク中。


主人公は、“養父”がいて、養父は“実父”を逮捕した刑事、ということなんですね。
実の父親は、主人公が幼い頃に、誘拐事件を起こして、その時に、誘拐した乳児を(誤まって)殺してしまう。
その結果、死刑に処された、と。

天涯孤独になってしまった主人公を、刑事が引き取ってくれて、“養父”として育ててくれた、と。
これが、主人公が抱える“前史”としてあるワケですね。


つまり、主人公と息子、主人公と父親、という、そういう「家族の系譜」がテーマになっているストーリー。


これがですねぇ。
邦題が「容疑者」ですからねぇ。

ちょっと違う。

もちろん「海沿いの街」も、直接的には「父子関係」とは言ってないワケですけど、抽象度があるワケで、つまり“ホームタウン”のニュアンスがそこにあるワケで、少なくとも「容疑者」よりは、テーマに近い。

サスペンスとして売りたい、というアレがねぇ。
魂胆が。
デニーロ主演、デニーロが刑事で、というのは、確かにそういうストーリーなワケですけど、でもね、と。


ただ実は、なんていうか、作品全体にも、この“なんか違う”感じがずっとあったりしているワケです。

もともと、ノンフィクションというか、実際にあったことを元に作られている、ということらしく、その“縛り”があるからかもしれないんですけど、せっかく“強い骨格”があるのに、それをどう語るか、という部分に荒さがある、というか、とにかく、しっくりきてないんですよねぇ。

もったいないと思います。


まず、音楽が異様にダサい。

それから、ショット/カットが、なんかあんまり意味を持っていない、というか、これは最初の「その街である意味はあんまりない」というのと関係してると思うんだけど、そういう所が弱いんですよねぇ。

セリフとかダイアローグ以外で、つまり、「そこにあるものを映す」時に、どう映すか、なにを選んで映すか、という、そういうことで伝えられることっていうのがあるワケで、まさにそこら辺が、映画を映画たらしめているハズなワケで、観る側も、無意識にしろ意識的にしろ、そういうのを求めている部分があると思うんですけど、この作品に関しては、そういうのはあんまり感じない、と。
どうも、淡々とカットが流れていくだけ、という感じで。

まぁ、それはそれで、いいんでしょうけど、でも、せっかく、ねぇ。
こういう街で撮ってるんですから。
もうちょっと“意味”を映し出しても良かったんじゃないかなぁ、なんて。


もうひとつ、キャラクターが、なんか、薄っぺらいんですよねぇ。
主人公はもちろん、ちゃんと“存在”しているんですけど、その周囲の人たちが、どうも、違う。
ただ自分勝手身勝手に、自分の都合で、つまり作る側の都合で、自分の心情を叫んでいるだけ、というか。

脇役と言えども、主人公と直接関係する、つまり、ストーリーに直接関わってくるキャラクターたちが皆そうだと、これは巧くいかないですよ。

唯一魅力的なキャラクターは、息子のガールフレンドとして登場する女の子。
ファーストフードのドライブインで働いている、という登場なんですけど、彼女には実は、幼い子供がいて、父親は(当然)主人公の息子なんだけど。
彼女も元ヤク中で、でも今はシングルマザーとして頑張っていて、でも、という。

主人公には、なんと孫までいた、ということになるんですけど、彼女は、自分の息子(主人公の孫)を連れて、主人公のアパートに押しかけてきたりして。

その、彼女の葛藤、というか、涙のシークエンスは、とてもいいんですよねぇ。


ストーリーラインとしては、主人公の父親、息子、孫、という、つまり、息子と孫(さらに、自分と孫)の関係という、「父子関係」の重層化が起きていて、思わず呻ってしまう、という感じなんですけど。


でも、そのせっかくの骨格に対して、肉付けが、どうも巧くいってない、という感じで。



ストーリーラインは、ホントに素晴らしいと思うんですよ。


実父との屈折した父子関係。
刑事としても人間としても、優れた人物である養父。

養父に憧れるようにして、自分も刑事になった主人公。
死刑囚の息子が刑事に、という、周囲の白眼視とも、主人公は闘いながら、名刑事として、仕事に打ち込む。
しかし、自分が持った家庭は、上手くいかなくて、崩壊してしまう。

その息子との関係。
自分自身も、息子にとっては「良くない父親」なんだ、と。
そうはならないと思っていたのに、実父とは違う形なんだけど、でも、息子にとってはやっぱり「良くない父親」で、息子は、主人公に対して屈折した感情を抱いている。

そして、息子の子供、つまり孫。
生活能力のまったくない息子は、もう既に、孫に対しては「良くない父親」でしかなくて。

じゃあ、主人公は、どうするか。
息子のガールフレンドは、「疲れた」と言って、主人公に子供を押し付けて、姿を消してしまう。
主人公は、「手に負えない」と、孫を児童養護施設に預けようとする。

しかし、と。


これは、かなり魅力のあるストーリーラインだと思います。


しかし、もったいなくも、なんかズレた感じの作品に仕上がってしまっている、と。



ひとつ思うに、“男たち”だけでストーリーを収めようとしているからかなぁ、というのは、あります。

主人公のガールフレンドがいて、彼女は、孫を手放そうとする主人公を責めるんですけど、それで終わりなんですね。
責めて、アパートから出て行って、それでおしまい。

ラスト、孫と主人公との関係の中に、彼女がいるだけで、だいぶ違った印象になっていたんじゃないかと思うんですけど。



まぁ、それだけじゃないですね。



うん。








この辺で。





面白いんだけどなぁ、と。



そういう作品でした。






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