2014年7月7日月曜日

「瞼の母」を観た

京都文化博物館のフィルムシアターで、土曜の真昼間に平均年齢(恐らく)80歳オーバーな方々と共に、中村錦之助主演の「瞼の母」を観た。



何度も書いてますけど、“文化事業”として、フィルムアーカイヴの公開をしてるんですけど、500円なんスよ。マジで。安い!
なんか、年会費で4000円払うと、無料(タダ!)になるみたいな“サービス”もあるらしいんで、来月あたり、ちょっとマジで入会しようかと思ってます。
8回行けばトントンってことですもんねぇ。


まぁ、それはさておき。



錦之助主演の「瞼の母」。
個人的に、諸々時代劇の勉強中で、“ある筋”から「瞼の母」を勧められてまして、「古い作品だし、観るチャンスは簡単にはないなぁ…」なんて思ってたら、「…あった」と。
上映してました、ということで。


主人公の弟分として、松方弘樹が出演してて、まさかの松方弘樹つながりっていうのもありましたけど。


冒頭からしばらくは、その松方弘樹と錦之助が、二人揃い踏み、というか、まぁ、渡世人の兄弟分の関係性を梃子にして、主人公の抱える“コンプレックス”みたいなのを(たっぷりと)描写していくんですね。

ここで、なんていうか、ヤクザ(渡世人)の、“弱さ”が徹底的に語られるんです。

なんか、主人公が情けない男に見えるぐらいに。



もちろんこれは、「錦之助が演じる」という前提があってのストーリーテリングなワケで、プログラムピクチャーとスターシステムという、この時代の製作システムがあっての語り口ではあるんですけど。

しかし、“稼業”や“看板”を謳い、男らしさ・荒っぽさを主張し、競いぶつけ合う、彼らヤクザこそ、実は“弱さ”“脆さ”“後ろ暗さ”を抱えていて、単に「そう生きるしかなかった」ということでなく、「そう生きることも難しい」みたいな、そういう捻った葛藤が、ある、と。

この、「渡世人稼業の人間が持つ弱さ」をどう描くか、あるいは、描くか描かないか、つまり、内面の弱さにまで踏み込んで語るか、あるいは無視して強さや様式美に拠りかかってストーリーを語るか、というのは、なんていうか、とても大事な要素なワケですよ。

もう“思想”の問題、というか。作り手の。
それは同時に、観る側(受容する側)の“思想”の問題でもあるワケですけど。


この作品では、それがかなり強調されて描かれている、と。

まぁ、タイトルからして「瞼の母」ですから、“母性”を巡る物語であることははっきりしているワケで、当然っちゃ当然なんですけど。

そして、文盲である義兄弟二人。
“代筆”という、このシークエンスはホントに素晴らしいですよねぇ。
絶対に思いつかない。
筆を持つ手を重ねて書いてもらって、そのさなかに、あまりの近さに、「母の温もり」みたいなのを感じてしまって、泣いてしまう、という。

普通に考えれば、単純に代筆してもらえばいいワケで、「なんかヘンだな」とか思っちゃったんですよ。実は。
でも、と。

考えられたカットだった、と。
なるほど、と思ってしまいました。




で。

後半は、主人公が江戸に赴いて、母親を探す、という流れ。


この、物語が転換するときに、盲目の老女が物乞いで三味線を弾いて、(酔って)ご機嫌な町人が唄を唄うんですけど、これがかなりいい感じのグルーヴで、ちょっと新鮮でした。
ラップのフリースタイルみたいで、結構“いい感じ”で。


ま、それもさておき。



まぁ、後半は、紆余曲折あって、母親と対面を果たすも、ということなワケですけど、ひとつ思ったのは、「渡世人が生き別れの母親を探し出す」という、この“ネタ”一発なワケですよねぇ。
このネタの一発だけで、作品(≒商品)として成立させちゃっている、という、83分という、特に長尺ではないんですけど、それでも、ちゃんと一本の映画として成立してるワケで。


なるほどなぁ、と。

「よく出来てんな」と、なんかバカみたいな感想ですけど、そんなことを考えたりもしちゃったりして。



結末は、なんか色々作品ごとに違ってるっていう話なんですけど、錦之助バージョンでは、“暗さ”を抱えたまま、引きずったまま終わる、ということで、これはこれで、良いんだと思います。



うん。



あともう一つ、カメラのアングルが、凄い低いんですね。
どのカットも、ショットも。


多分、全編セットで撮影されているからだと思うんですけど、ひょっとすると、カメラマンの個性とか何かの狙いだったりするんでしょうか。
不勉強なもんで、そこまでは分かりませんでしたけど。

でも、結構動くんですよねぇ。カメラが。
引いたり寄ったり、揺れたり。

色んなことしてるんだなぁ、と。


障子を挟んで、向こうからはこっちが見えない、見えないハズなんだけどでも、みたいなカットとか、そういうエッジの効いた構図もあったりして、凄ぇな、と。




うん。


さすが古典。
面白かったです。


まぁ、やっぱり、スクリーンで観てるからだと思うんですけど、新作を観てるのと変わらない感覚で、古くささを感じない、新鮮な映画体験でした。




0 件のコメント:

コメントを投稿